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仏教解説

35 仏教とはなにか -ブッダを継ぐ人々- ①

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 これまで歴史的観点より、大きく仏教の歩んできた道を見てまいりました。次は仏教の開祖であるブッダ入滅後、ブッダに関わりのあった人々は何をしていたのかということに焦点を当ててまいります。

 八十歳の高齢に達したブッダがクシナーラー(クシナガラ)の郊外で入滅した時、いつものようにたくさんの弟子たちが付き従っていましたが、その主な弟子たちはアヌルッダ、アーナンダ、ラーフラなどで、このうちはじめの二人はブッダの徒弟で、三番目はブッダの実子です。尼僧達は平常でも男僧達と行動をともにすることは許されていませんでしたので、やっと入滅後にブッダの遺骸に対面することができました。

 ブッダの最高の弟子はマハーカッサパでしたが、その当時自ら弟子達をひき連れて宣教の旅に出ていましたので、入滅後一週間経ってクシナーラーに到着しました。

 その間に、クシナーラーのマルラ族の人々は香花を供え歌舞をたむけ、まる一週間にわたって供養を続けました。ブッダの遺訓により「精神修行に専念する出家者は葬祭などの俗事に携わってはいけない」と厳命されていましたので、ブッダの遺骸の供養は、すべて在家信者のマルラ人達に任されていました。

 一週間経って、マハーカッサパも立会の上、壮麗な礼をもって火葬に附しました。その後に残った遺骨を壺に納め、クシナーラーのマルラ人達がその遺骨を大切に保存しようとしました。その時マガダ国のアジャータサットゥ王が使者を遣わして、ブッダの遺骨を要求しました。続いて、方々の国々から同じ要求が来ました。クシナーラーのマルラ人達は、これらの要求を拒(こば)み、遺骨を自分達の手で守り続けようとしました。遂に正面衝突となり、あやうく武力に訴えそうになりました。

 その時一人のバラモンがこれを調停し、遺骨を八分しました。その結果北インドの八ヵ所に遺骨を納めたストゥーパ(塔)ができました。

 ブッダの遺骨(舎利:しゃり)を礼拝するために塔を作るという儀礼は、その後もインドで続けられ、セーロン、ビルマなどの南方諸国では、現在もなお行われいます。中央アジアから中国、朝鮮、日本へと伝わってきた仏教でも、仏舎利の礼拝と塔の建立が信仰形態としては重要な役割を演じています。日本などでは、後には塔は寺院建築の一様式にすぎず、舎利を納めるという本来の使命は忘れられてしまいました。

 さて、仏舎利を祀(まつ)るという宗教儀礼は本来仏教ではどういう意味を持っていたのでしょうか。

 ブッダは入滅の直前にあたり弟子達を誡(いまし)めて「私の亡いあとは法(おしえ)と律(きまり)とを師とせよ」と言い、「法と自分自身とを拠り所とし、燈明とせよ(自帰依・法帰依または自燈明・法燈明)」と教えました。

 この峻厳な訓戒は、異物崇拝とは全く異なるものでした。だからこそ、ブッダの愛弟子たちは、遺骸の処分を俗信者たちに一任し、自分たちは精神修行を努めることに専念したのでした。

 遺骨に対する強い執着を示したのは、以前にも記しましたが、国王をはじめ貴族やバラモン達でした。クシナーラーの信者達が、この地に入滅した偉人をこの地に葬りたかったのはまだしも、たとえば、マガダ国のアジャータサットゥ王が何のために武力に行使してまでも遺骨を入手しようとしたのかというと、最も信頼ができる記録によれば、アジャータサットゥ王がブッダに面会したのは、ただ一回のみにすぎません。ブッダ入滅の数ヶ月前に大臣を派遣してブッダの意見を求めたことがありましたが、王の臣下の中には熱心な信者がいたとしても、王自身はブッダに対してただ一般の宗教家に対するのと同じ程度の関心しか寄せていなかったと思われます。その王がブッダの遺骨を要求したのは、恐らくもっと実際的な考慮に基づいたものに違いありません。つまり、今も昔も聖者の遺物に対する俗信仰は宗教のいずれかはさておき、広く行われている信仰形態の一つです。聖者の遺物を崇拝することによって現世利益(げんぜりやく)追及するのは、一般人の宗教性の共通性ともいえます。ブッダの説く教えを理解できない人でも、その遺物のもたらすべき功徳に対しては敏感でした。それにもまして、当時の迷信深い一般人を統制し、制御する君主として、この貴重な聖者の遺物を入手するために武力に訴えようとした理由は容易に想像できます。

 遺骨の分配と塔の建立は、ある意味では仏教の持続と普及殿目盛りとも考えられますが、別の面から考えれば、本来の精神修行の仏教から通俗信仰への逸脱の第一歩とも見られます。*

*渡辺照宏著 「仏教のあゆみ」
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