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仏教解説

33 仏教とはなにか -後期仏教- ①

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 紀元前三百二十年に、マガダからおこったグプタ王朝の創始があり、それはやがて全インドを征服して、マウリヤ王朝以後はじめての統一国家の成立がありました。この王朝はヒンドゥ色がきわめて濃く、いわゆるインド正統の宗教・哲学・文学・芸術・法典などが、きちんと体系を整え、非常に豊かなものとなり、インドの古典の粋を極めます。それらが広く強力に社会に浸透するにつれて、仏教は比較的急激に信者数を減らしはじめ、その勢力を失ってゆくので、ここでは四世紀初頭以降を、インド仏教史の後期仏教として扱います。この時代の前半には中期大乗が、そして七世紀以後の後半には密教と後期大乗とが、またその全体を通じて数種類の部派仏教がインドにおいておこなわれました。

 およそ四世紀から六世紀までの中期大乗仏教には、それ以前の最盛期の名残りが依然としてかなり強烈に残り、とりわけ如来蔵(仏性)と唯識(ゆいしき)と仏身論(ぶっしんろん)の三身説との三つの説が結晶のように組織されました。それらの各々には、初期大乗にみられたような積極的な外交性は消えて、内省的で消極的ではあっても、宗教として、また哲学として、仏教思想の一種の頂点を示す、非常に高水準なありかたを展開し、しかもそれぞれの論述は体系的に進められています。

 初期仏教に心の重視が説かれて、心の本体は清浄なものであり、または、心が機能して一切万物が展開すると主張されました。これを起原とし、そのプロセスに種々の説を重ねてのち、先の前者から如来蔵思想が、後者からは唯識説が創出されました。

 如来蔵は仏性とも称し、すべての衆生(生命あるもの)が平等であるという仏教の基本的立場に、あるいはおそらくインドの土着思想とアートマン説とが反映して、衆生は如来ないし仏の素質を、生まれながらみずからの内部に宿していると教えています。これは中期大乗の経論に説かれたあと、しばらく続いてからインドには消滅するが、後代に密教が栄えて、さかんに即身成仏を説く際には、如来蔵思想がその背後にあるとも理解されます。

 また如来蔵説は中国仏教に、また日本仏教の大半において、その肯定的性格の故に、大歓迎を受けて格別に重要視され、それらの教学と実践との中枢を占めるようになります。(ただしチベット仏教には如来蔵説は欠けます)

 唯識は、人のいかんともしがたい煩悩を見つめ、それを追求してゆき、あらゆる対照的存在を各人のもつ表象に帰納させて、表象の投影が外界の事物に他ならないことを明らかにします。それは全ての認識・意識の底に潜在するアーラヤ識に到達しますが、ヨーガの実践者である瑜伽行(ヨーガーチャーラ)派のヨーガ体験に裏付けられつつ一体化しています。同時に、唯識説を先導した「解深密経(げじんみっきょう)」には五姓格別(ごしょうかくべつ:強固な差別思想)の教義があり、仏教の目指す平等に達するためには、空(くう)の思想による逆転を必須としました。

 なお、極端な言い方をすれば、傾向を考えてみると、如来蔵説は理想を追って普遍性に、唯識説は現実に迫って個別性に傾く(両者ともさとりに向かう)とも、また中国の古代思想ふうに大まかに表現すれば、如来蔵は性善説に、唯識は性悪説に配置されるでしょう。

 唯識の分析理論は学問としても精緻され、その教学上には、やがて認識論、同時にはそれを必要かつ充分に表現し伝達する論理学が、優れた学者たちにより構築され進展していきます。しかもそれは、四世紀以降に華々(はなばな)しく展開したインド正統哲学(これには六種の学派があり、六派哲学とも称する)の諸賢人との論争も不可避であり、むしろそれを経過して双方とも一大飛躍を遂げます。

 仏身論は、ブッダの入滅直後より起こり、初期仏教から中期仏教にかけては、釈迦仏のみに着目して二身説(色身ともいわれる肉身と、法そのものを体としている法身との二つ)に終始していましたが、多数の大乗諸仏が登場し活躍する場面を迎えて、三身の展開が説かれ、とくに瑜伽行派において理論化されました。これについては後々書いていこうと思います。

 七世紀以降の後期大乗は、一部に密教からのたとえば方便重視を受け入れながら、かつてナーガールジュナの説いた空観(くうがん)の再興があって、中観派(ちゅうがんは)と呼ばれます。中観と唯識とは、おりから栄えたインド正統の諸学派入り乱れての多方面にわたる論争に、大きな比重を占めただけではなく、チベットに伝えられて、チベット仏教の本流となり、やがては中観派の独壇場となりました。*

*三枝充悳著 「仏教入門」
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