仏教解説

26 仏教とはなにか -中期仏教- ②

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 部派仏教の動静はインドの城内では記録されず、中国からシルクロードを渡り、天竺(インド)へ赴く旅を果たしたうえに旅行記を残した三人の求法僧(ぐほうそう)、つまり法顕(ほっけん)、玄奘(げんじょう)、義浄(ぎじょう)によれば、常に部派(小乗と記されている)が圧倒的に有力であり、とくに有部・正量部・上座部と大衆部とが抜きんでていました。また、スリランカに、さらに後代に東南アジア一帯に拡大したのは上座部系であり、地域ごとに、長い年月の間には一時的な衰滅があり、大乗や密教の伝来もありますが、正統上座部を自称する大寺派(マハーヴィーラ・ヴァーディン)が今日まで栄えます。

 紀元前一世紀に二十あまりの部派が目指したのは、みずからの正統性を証明するためにも、拠り所となるお経と戒律との整備でした。ブッダの説法を含む初期仏教の経典は、アーガマ(阿含:伝来という意味)として口誦の形で伝えられており、それを各部派では一つに取りまとめ、形式と内容とを整え、そして固定しました。初期経典の現在形はこのようにして編纂され、それがパーリ五部、漢訳四阿含その他として伝わっています。

 漢訳の諸資料は、四阿含の他に「雑蔵(ぞうぞう)」の名を記し、それには四阿含に洩れた諸経典が含まれ、パーリの小部に相当して、新旧雑多のものを集めたそうですが、ほとんど現存していません。

 またパーリ小部の原語中のクッダカ(サンスクリット語はクシュドラカ)は、小よりも雑のほうが相応しいですが、漢訳の「雑阿含経」(クシュドラカ・アーガマ)との混同を避けるために、雑部ではなく小部とします。このパーリ小部は、他の四部より量がはるかに多く、その中の現在の形の「ジャータカ(本生譚)」などには、成立の新しいものも少なくありません。

 お経と戒律の確定に続いて、自説の構築のために、お経の注釈が創られます。この一部はパーリ小部の内部にあり、後にはこれが発展して「論蔵(ろんぞう)」と呼ばれます。

 これらが可能となったのは、いくつかの有力な部派教団が、王族貴族たちや富裕な商人などの信徒から篤い後援を得て、中には荘園の寄進を受けて、学説の研鑽に専念できたことによると言われています。また、部派をサンスクリット語でニカーヤと呼んだ形跡が、義浄の旅行記やチベット語などに見られます。ただし、パーリ語文献にはありません。

 部派において創作された文献類の大半をアビダルマ(アビダンマ・阿毘達磨・阿毘曇。毘曇と略し、論と訳す)といいます。それらの経典群は「アビダルマ蔵(ピタカ)」と呼ばれ、論蔵と訳し、初期仏教から伝えられた経蔵および律蔵と合わせて、ここにはじめて「三蔵」が成立します。三蔵は仏教聖典をあらわし、パーリ仏教の内部では、その全体を広義の仏説とみなします。中国では、三蔵を一切経(いっさいきょう)や大蔵経(だいぞうきょう)とも呼びます。

 アビは「対して」や「ついて」を意味し、またダルマは仏説をあらわすお経とほぼ同一視されて、法と訳されるのは、仏説に示される真理・真実をさすという解釈によります。アビダルマは「法の研究」をあらわして、対法と訳されます。パーリ文献ではアビを「優れた」や「過ぎた」を意味するとして、アビダンマを「優れた法」と解釈します。

 パーリ上座部には、紀元前二百五十~起源前五十年ごろの約二百年間に、「カターヴァットゥ」(論事)を含む七つの論が成立し、この七論が論蔵(アビダンマ・ピタカ)とされ、その他の注釈書や研究書などは、すべて蔵外として扱われます。

 有部(説一切有部)でも、「発智論(ほっちろん)」のほか六種の足論(そくろん)と呼ばれる論書(ろんじょ)が作られ、一般に「六足発智」と称します。これらは前一世紀頃までに成立しました。中でも「発智論」(意訳『八犍度論(はちけんどろん)』)は、大論師カーティヤーヤニープトラ(迦多衍尼子:かたえんにし)の著で、その広汎な内容が有部の数学の基本を示すところから、身論(しんろん)とよばれています。これらの七論は漢訳が揃います。それらのサンスクリット語のわずかな断片が中央アジアから発見され、ドイツに校訂があります。

 以上のほか、論蔵には加えられない注釈書や解釈書、また論書も多数作られました。

 パーリ文献では、二世紀のウパティッサのあと、五世紀に南インドからスリランカに渡来し長期間滞在したブッダゴーサ(仏音:ぶっとん)が、三蔵のほぼ全部に詳細で厖大な注釈書を作り、また独自に名著「ヴァッスッディマッガ(清浄道論:しょうじょうどうろん)」を著しました。彼の解釈が上座部教理の標準として、現在もたえることなく引用されています。*

*三枝充悳著 「仏教入門」
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