仏教解説

22 仏教とはなにか -初期仏教- ③

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 仏教の教団はサンガ(僧伽:そうが)と称します。サンガの原意は集まり、集団、会議などで、やがて組合(ギルド)や共和国、同盟国などをもあらわします。ブッダ在世の間は、ブッダのもとに一様に弟子たちは平等であり、その団結は比較的ゆるやかであったと考えられます。ブッダ入滅後に教団の整備が次第に進み、男性の比丘と女性の比丘尼とは、組織を別にしました。彼らに近く使える人を意味する男性のウパーサカ(優婆塞:うばそく)と女性のウパーシカー(優婆夷:うばい)の語は、在家信者を指します。以上を四衆(ししゅ)と呼びますが、もとより出家者を主とします。

 比丘も比丘尼も、出身は学識のあるバラモン系が多いものの、他のカースト全般に及びます。教団内の平等は徹底していて、出家以前の差別は全て消え、席次は出家後の修行の年数(法臘:ほうろう)によりました。ただ教団が集団としての秩序維持のため、またブッダの遺訓もあって、ブッダがかつて説いた戒めに基づき、集団規則としての律(ヴィナヤ)が立てられ、それらは、メンバーの増加その他の諸原因から、次第に増加しました。これを随犯随制(ずいぼんずいせい:または随犯制戒)と称して、教団全員の合意により決定され、これに違反した場合には、告白、懺悔、教団追放などの罰則があり、ただしそれ以上に及ぶことはなく、暴力を含む力の行使は一切ありません。

 他方に、自発的に身につける戒(シーラ)があり、罰則による規制ではなく、むしろ各人の習性に高めようとします。信者は仏法僧の三宝に帰依し、五戒(不殺生・不盗・不邪淫・不妄語・不飲酒)を誓い守ります。

 インドは、同じ東洋の大国の中国とは異なって、政治統一の歴史がきわめて稀で、長かったとしても百余年しか続かず、群小国家や大国がつくられても、割拠に終始します。

 紀元前三百二十七年にギリシアのアレクサンドロス大王(紀元前三百五十六-三百二十三年)が西インドに侵入し翌年撤退した後まもなく、富裕なマガダ地方から立ったチャンドラグプタは、マウリヤ王朝を創始します。この王朝がインドに最初の統一国家樹立を果たし、第三代のアショーカ王(阿育王:二百六十八年-二百三十二年在位)の時代に全盛を迎えます。この王の即位がギリシアの文献に記録されて、古代インドの年代決定の鍵となります。また即位を後代のスリランカ伝(南伝)はブッダ入滅より二百十八年後、五代の仏弟子の経過を記し、北伝は約百年、ブッダの弟子は四代といいます。南北両伝に多くの論拠があり、世界のインド学者の論争が継続する中で、現在有力視されている北伝によれば、前述の通り、ブッダ入滅後は紀元前三百八十三年、ブッダの生涯は紀元前四百六十三年-三百八十三年となります。

 アショーカ王はやがて仏教に帰依し、とりわけ東海岸のカリンガ地方攻略のときにみられた戦闘の悲惨を深く恥じて、仏教を尊崇するようになりました。しかし同時にバラモン教やジャイナ教その他の諸宗教も保護し後援をしました。このような伝統は、以後のインドに受け継がれることとなります。

 王は無用な殺生を禁止し、国内に道路を引き、樹木を植え、井戸を掘り、休憩所、病院、施しの家を建て、薬草を栽培して、いわゆる福祉に努めました。また王は仏蹟を巡拝し、王子(弟ともいう)のマヒンダをスリランカに派遣して、仏教の普及拡大に尽くしました。さらに普遍的な法(ダルマ)を政治理念に掲げてみずから誓う他に、その信念を吐露した詔勅を石柱と岩石面とに刻み、民衆の協力を呼びかけ、また使臣を通じて西方諸国(シリア、エジプト、マケドニアなど)にまで伝えました。

 十九世紀以降に発見された各地の石柱詔勅は二十六あまり、当時の国境付近の岩石詔勅は十ほど、ともにほぼ十四章ないしほぼ七章の文章は、現在すべて解読されています。サールナート他の石柱詔勅は、当時目立ち始めた教団の分裂を危惧し戒めるためのものです。また、バイラートで発見された岩石の小詔勅には、仏法僧の三宝への帰依文のあと、仏教の正法(しょうぼう)に役立つとして七種のお経(ダルマパリヤーヤ:法門)をあげます。これ七つは現存のお経の一部に跡づけられますが、相違もかなり多く、そのために王の時代には現在伝わる初期経典の枠は未だ決定されていなかったと推測されます。ともあれ、アショーカ王の時代に仏教は一大躍進を遂げました。

 おそらくこの統一国家と帝王の理想像とから、やがては転輪聖王(チャクラ・ヴァルティン:普遍的帝王)の理念が生まれ、それは仏典の各所や多くの聖典に時々説かれます。

 アショーカ王は晩年には政務から離れ、部下に背かれます。マウリヤ王朝も衰退し、紀元前百八十年頃滅びて、インドは再び分裂状態に戻ったのでした。*

*三枝充悳著 「仏教入門」
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