仏教解説

12 仏教とはなにか -ブッダについて- ④

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 これまでが、おおよそではありますが、仏教の発生以前の一般情勢でした。未来のブッダは、西暦前五百六十年頃、カピラヴァストゥのシャークヤ族の王(スッドーダナ)の子として生まれました。ブッダの母親(マーヤー夫人)は誕生の一週間後に逝去しましたが、母の妹(マハープラジャーパティー)に育てられ、父の寵愛のうちに何不自由なく成長しました。ブッダは最初、シッダールタ太子と名づけられましたが、その族姓としてゴータマ(ガウタマ)と一般によばれました。太子はやがて幸福な結婚生活に入りますが、やがては出家します。世俗生活の幸福から宗教への転換の動機としては、四回の出遊の物語が伝えられています。太子が郊外に遊園に出かけようとして馬車を走らせた際、第一回に市中で見たものは老人であり、第二回には病人、第三回には死人でした。太子はその度に、快楽の欲望を失って城中に引き返しました。第四回目の外出に際し、出家者の神々しい姿を認めて、そこに自分の理想の姿を見出します。この物語は象徴的のものであり、必ずしも青年になるまで老人、病人、死人を知らなかったわけではなかったでしょうが、とにかく、青年期のある機会に老、病、死という人生の真相を直視して、その悲惨な宿命と対蹠的(たいしょてき:正反対)な宗教生活に、強いあこがれを感じたことは事実でしょう。

 ラーフラという嗣子(しし:後継ぎ)が生まれたのをきっかけに、世を捨てて出家生活に入る事を決意し、それを実行しました。一般の修行者と同じ生活をし、初めのうちは、すでに名声のある師についてヨーガの実習をしました。やがてヨーガについては、師と同じ段階に達し、二度目の師についても同じ経験を繰り返します。もはや、これ以上は他人の教えを受ける事がないので、ただ一人森林の奥にて苦行に努めることとなります。肉体を苦しめる事によって精神的に向上できるという考え方は、インドでは珍しいことではありませんでした。しかし、ブッダは苦行によってもその理想に達することはできませんでした。六年間の苦行の後、苦行を実践するということは無益なものだと悟った彼は、ついに苦行を放棄して、最後の手段として、瞑想に専心することにしました。非常にきれいな水があるネーランジャラー河の辺りの美しき林が選ばれました。この河のほとりにあるウルヴェーラー村の村娘であるスジャータによって供養された乳粥でもって身体は元気に恢復したブッダは、とある大樹(ピッパラ樹:菩提樹)の下に両足を組んで坐りました。*

 私たちは、その時のブッダの心理について、何も直接知ることはできません。経典作者は、この重要な出来事について、多様な比喩や象徴をもって語っています。ただ確実に言えることは、さきの大樹での体験はブッダの生涯をはっきりと二分し、これ以後は、独自の革新をもって行動することになると同時に、これまでには見られなかった強い印象や、他人を感化させることになっていきます。仏教経典の作者は、この体験以後の彼を「ブッダ(仏陀)」つまり「目覚めた人・悟った人」と呼ぶようになります。これに対し、それ以前の生活(数多くの前世を含む)の間は「菩薩(ぼさつ:ボーディー・サットヴァ)」すなわち「悟りを求める人」と呼びます。「ブッダ」以外にも尊称として「世尊(祝福ある人)」「如来(完成に達した人)」「釈迦牟尼」または「釈尊(シャークヤ族出身の聖者)」その他多くの称号が用いられます。

 さて菩提樹の下で悟りを得たブッダは、まずこれによって自分の追求していた理想を実現し、最高の真理を認識したのですから、それによって、一応の目的を達成したわけです。しかし次に問題になるのは、自分の発見した真理を自分の胸の内にしまっておくべきか、それとも、これを世間の人々にも知らせるべきか、という点です。世間の人々の理解の程度を考えてみると、この真理を説いて聞かせることは、あまりにも無謀に思われました。経典作者はここにおいて、古くからのインドの神の一つであるブラフマン(梵天)を登場させます。ブラフマンの懇願によってブッダは、これまで抱えていた問題(人間の苦の超克)の解決をし、それについて教えを説いていこうと決意するのでした。*


* 渡辺照宏著 「仏教のあゆみ」
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