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仏教解説

7 仏教とはなにか -その時代の宗教- ①

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 紀元前二千五百年前、釈尊によって説かれた教えが仏教であることは説明しましたが、しかし、その当時すでに宗教は存在していました。それについてみていきましょう。

 アールヤ人の宗教は基本的にはバラモン教として知られていますが、現在でいうところのヒンドゥ教というのは、それの近代における形を指します。ただし、広い意味でヒンドゥ教とバラモン教とを同じ意味に用いることも多いです。バラモンというのはアールヤ人の世襲の祭官で、彼らが宗教上の権力を独占していたからバラモン教といいます。

 インドに入ったアールヤ人は、その前にはイラン人と共同生活をしていたから、この二つの民族の古い宗教には共通の要素が少なくありません。たとえば多くの神々を信仰し、神々と神々の敵との対立を認めています。インドではデーヴァが善神で、その敵がアースラ(後の仏教では阿修羅)であり、イランではこれに反して、アフラが善神で、その敵がダエーヴァとなっています。ソーマ(ハオマ)という草から製した酒を供えることも、動物を犠牲に捧げることも、火を祭ることも、この両方の宗教に共通しています。さらに遡ると、ヨーロッパの諸民族、たとえば古代のギリシヤ人、ローマ人、ゲルマン人たちが、神々に動物を捧げて恩籠(おんちょう)を祈ったことも共通の起源に基づくもので、ギリシヤのゼウス、ローマのユピテルという神の名と同じものが、インドにも見出されます。これらのヨーロッパの諸民族は、キリスト教に征服されたために、民族固有の宗教を捨てたのでした。

 しかし共通の要素が多いといっても、インドに入ったアールヤ人は、一種独特な宗教組織を発展させ固定させるに到りました。それはインドという特殊な風土によるものか、それとも先住民族の文化から影響を受けたためであるかは分かりません。おそらくその両方でしょう。それがいわゆるバラモン教なのであって、原則的にはその古い宗教が今日でも存続しているのです。

 その中でもバラモン教の特色の主となるものは、以前にも出てきた聖職を中心とする階級制度(カースト)と聖典の神聖さとの二つでしょう。インドの階級制度は非常に独特なものです。インドの西北部に侵入したアールヤ人の生活において、宗教はきわめて大きな役割を果たしていました。個人の日常生活も、社会活動も、すべて神々との関係がなくては関係がなくては考えられないものになっていました。供物(くもつ)を捧げて神々の恩寵を祈ったり、その怒りをしずめたりすることは、何よりも重要なことでした。つまり、宗教の秘密を知り、儀礼を取り行うものが、自然に大きな権力を持つようになりました。こうして、インドに定住してから、かなり早い時期に、バラモンを最上位におく社会的階級が確率されたのでした。バラモンの次はクシャトリヤで、王族や武士階級がこれに属します。第三はヴァイシュヤ、つまり農工商に従事する一般庶民であり、最下位に属するものがシュードラ(スードラ)といわれる奴隷でした。この最後のものは、征服された原住民が主体となっています。このような階級制度によって、バラモン階級は宗教上の特権を持ちます。これがバラモン教と称される所以であり、この特権は世襲です。これがこの宗教の第一の特色です。

 次に、聖典を絶対的なものとして神聖視することも著しい特色でしょう。バラモン教の聖典は「ヴェーダ」(知識という意味)文献と総称されますが、そのうち、狭い意味で「ヴェーダ」というのは、「リグヴェーダ」など四つの根本聖典です。「リグヴェーダ」はインドのみならず、インド・ヨーロッパ語族全体を通じて最も古い文献で、その意味でも貴重な資料ですが、一千ほどの讃歌を集めたものです。これらの讃歌は、インダス河流域(パンジャブ地方)に侵入したアールヤ人の宗教感情を率直に吐露したもので、色々な神々に捧げられていますが、ソーマ酒(インド神話に登場する神々の飲物)の供養に関係したものが多いです。これらの讃歌はバラモンの家系に伝えられ、神聖視されるに至りました。「ヤジュルヴェーダ」と「サーマヴェーダ」とは、それぞれ祭式に使用する目的で編集されたものですが、内容的には「リグヴェーダ」の範囲をあまり出ません。

 四つ目の「アタルヴァヴェーダ」も「リグヴェーダ」に似ていますが、これだけは特別な内容を持ち、色々な機会に用いる呪法や魔法に関するものが多く、前の三つ目の「ヴェーダ」と区別されます。あるいは土着民などの民間信仰を反映したものではないかとも推測されています。

 以上の四つ(時としては初めの三だけ)を「ヴェーダ」の本集と称するが、広い意味でヴェーダ文献というと、この他に「ブラーフマナ」(梵書)、「アーラヌヤカ」(森林書)、「ウパニシャド」(奥義書)という三種類の文献が含まれます。このうち「ウパニシャド」には深淵な形而上学を述べたところがあって、インド思想の研究者たちは珍重します。以上は「シュルティ」(天啓書)と称せられ、後世の「スムリティ」(聖伝書)と区別されます。西暦紀元以後になると、バラモン教の内部でもいろいろな哲学の学派が発展しますが、およそバラモン教に所属する限りは、天啓書の絶対的神聖を信じることを基本としています。

 一口にバラモン教といっても、時と所とにより、また環境によって、必ずしも同一ではありませんが、バラモン階級の特権と、「ヴェーダ」の神聖を認めることには変わりがありません。近代のヒンドゥ教もまたその伝統を伝えています。中世にイスラム教がインドの土地で多くの信者を獲得したのには、他にも原因があるでしょうが、このような宗教的階級制度に苦しめられていた下層民が、外来の福音に飛びついて行ったことは容易に想像できます。*


 世襲については、メリットとデメリットがあります。メリットは、自分の子供に継がすことができることです。子供時分より正しい教育をし、真摯に努力をしていき、常に向上しようとする信念があれば、親御さんの良い部分を吸収していき、悪い部分を排除していくので問題が起こるのではなく、周囲の人々も安心できるので、親御さん後のことが安心できるでしょう。

 デメリットは、その恩恵を利用してしまう人もいるということです。恩恵があるから努力もしない、考えない、自分の思い通りになるように強制することもあります。恩恵の上にあぐらをかいて座るというのは絶対にやってはいけないことです。また、自分の言動などが間違っているということなど思わず、むしろ自分の行いが正しいという認識になっていることが一番恐ろしいことで、注意されても相手が悪いとしか見ない、つまり反省することがないから、それをやり続けてしまい、最終的には手の施しようがなくなるまでになってしまいます。

 ただ、そういう人ばかりではなく、さきの素晴らしい人の意思を継いで、もっと努力していこうという人もいますし、さきの人が上記のような人だったとしても、「これではいけない」と考え、誹謗中傷の中でも改善するために努力される人もいます。自分と周りの人々のためを思って行動できる人こそ、後継ぎに相応しい人だと思います。

 跡を継がれる人は、自分たち(それを取り巻く人々)が獅子身中の虫にならぬようにしなければなりません。


* 渡辺照宏著 「仏教のあゆみ」
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