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仏教解説

4 仏教とはなにか -仏教の特色- ①

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 他の諸宗教、とくにキリスト教やヒンデゥ教を考慮に入れながら、仏教の顕著な特徴のうち、最も重要な部分を出していきます。


 一)仏教はゴータマ・ブッダ(これより釈尊と呼びます)を創始者とし、釈尊が仏教という一種の宗教組織を強く意図していたとは断定できるものではありませんが、その最初の説法(初転法輪)以来四十五年に及ぶ遍歴遊行(伝道の旅)の間に、多くの弟子と信徒が釈尊のもとに集まり、やがて教団が形成されました。このことは、ナザレのイエスの磔刑(たっけい)直後に、一度は四散していたペテロをはじめとする使徒たちの誰もが、すでに亡きイエスの声を耳にしてその復活を信じ、オリーブの山に集まってから再びエルサレムに戻り、群衆を前に、十字架上に死んだイエスこそキリスト(メシア、救世主)であると確認し合った時点にはじめて、キリスト教が成立したというあり方と、根本的に相違します。また創始者を立てず、インドの諸習俗が広範囲に浸透するいわゆる民族宗教のヒンドゥ教とも、著しく質を異にします。

 二)釈尊の教えにもとづく初期経典の他に、それの数倍もの大乗諸経典が、仏滅後ほぼ五百年余を経て出現した大乗諸仏により創作されました。さらには卓越した諸論師(ろんじ)の著述である諸論書(ろんじょ)もやがては聖典に加えられて、その数も量もきわめて厖大となっていきます。このうち、インド仏教の伝統が十三世紀はじめに消滅したために、原点の失われたものは多数に及びますが、それに代わる大量の翻訳仏典が現在に残り、それは他の諸宗教を圧倒するものとなっています。

 三)釈尊においてそうであったように、常に現実を見つめ、現実の様々な苦悩に対応する教えが多種多彩に説かれました。本来、現実そのものが多様である以上、教説の展開もヴァリエーションに富み、このことをその当初から、対機説法(たいきせっぽう)、応病与薬(おうびょうよやく)、人を見て法を説く、八万四千の法門などといいます。つまり、仏教の教義の学説は存在せず、異説排除の考えもきわめて薄いのです。逆にいえば、仏教の教理そのものや、仏教のありかたは揺れやすく、それの一義的な定義は困難であり、不可能に近いといっても過言ではありません。

 四)これらの情況は、仏教内部に多くの論争を生じさせ、仏教思想史は一面で仏教論争史とも解されますが、また他方に、ときには相反するほどに多様な諸教説の共存を許し認めるという思想史が形づくられて、今日にいたります。かつて異端審問をはじめ、暴力行使などの跡は、たまたま政治に巻き込まれたごく少数の例外を除けば、仏教には全くありません。また他の諸宗教との軋轢(あつれき)や闘争も稀(まれ)で、むしろ様々な諸教からくる哲学・思想を包括し、取り込んでいくようになります。

 五)釈尊と大乗諸仏とに対する敬慕(けいぼ)や崇拝・帰依は、心情においては共通しているものの、形式や内容はかなり異なり、密教を加えると、いっそう多岐となります。

 六)これらにより、仏教の多様性は寛容宥和の述語を必要としないほどに当然視され、狂信的態度は一部の例外を別として、全般に弱くなります。ヒンドゥ教に協調されるバクティ(親愛・誠信)というサンスクリット語(古代インド語)を仏教は採用しませんでした。しかし思想も実践もしばしば放恣(ほうし)に流れ、時に濫用さえ放任して、仏教自らの性格によって昏冥(こんめい)を招いたケースも少なくありません。*


* 三枝充悳著 「仏教入門」
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