仏教解説

59 人間としてのブッダ -故郷の人々- ③

 ←58 人間としてのブッダ -故郷の人々- ② →60 人間としてのブッダ -故郷の人々- ④
 故郷において、この聖者の評価がようやく定まるとともに、郷土の若者たちは次第にその血を沸かせていました。

 今日私たちは、有名な仏弟子の中に、幾人かのサキャ(釈迦)族の出身者の名前があることに気がつきます。アーナンダ(阿難)、アヌルッダ(阿那律)、ウパーリ(優波離)、そして、けっしてよい意味で有名であったわけではありませんが、デーヴァダッタ(提婆達多)もまたそうでした。

 おそらく、ブッダ・ゴータマの生涯を通じてこの聖者のもとに来て、その身を投じたサキャ族の青年たちの数は、数百以上になることに違いはないでしょうが、その中でも、もっともよく知られた弟子たち、後世の仏教者たちが、しばしばそのような弟子の十人をあげて、これを十大弟子と称するのですが、その中にも私たちは四人のサキャ族の出身者を見出すことができます。それは、上にも出ているアーナンダ(阿難)、アヌルッダ(阿那律)、ウパーリ(優波離)、そしてブッダ・ゴータマの子供であるラーフラ(羅睺羅)です。


 一つの仏教文献(律蔵、小品、七)は、それらサキャ族の青年たちの出家の様子を、かなり詳細にわたって記しています。それは、ブッダ・ゴータマがアヌピヤ(阿奴夷)というマッラ(末羅)族の村にいたときのことだったそうです。その時、ブッダは故郷の訪問を終えて、再び南方に向かって遊行をはじめて、ようやくこの村まできました。それを追って、幾人かのサキャ族の青年たちがやってきました。その青年たちの名前を、この文献では、バッディヤ(跋提)、アヌルッダ(阿那律)、アーナンダ(阿難)、バグ(婆咎)、キンビラ(金毘羅)、デーヴァダッタ(提婆達多)、ウパーリ(優波離)と並べて記しています。彼らがブッダ・ゴータマのあとを追うまでの消息は、おおよそ次のように記されています。


 彼らの中の一人、アヌルッダ(阿那律)には、マハーナーマ(摩訶那摩)という兄弟がいました。二人は、ブッダ・ゴータマの帰郷にあたって、どっちか一人が出家してその弟子となろうと決意しました。二人の話し合いの結果は、マハーナーマが家を継いで、アヌルッダが出家することに決まりました。しかし、彼らの母はどうしてもアヌルッダの出家を許してくれません。アヌルッダもまた出家の決心をどうしても曲げませんでした。

 この母と子は、出家は許さない、どうしても出家すると、いつまでも言い争っていました。その言い争いの末に、ついに母が譲歩していったことは、「もしバッディヤが出家するといったならば、おまえもまた出家してもよいのだが」ということでした。

 バッディヤ(跋提)は、もともとアヌルッダの友人ですが、いまはサキャ(釈迦)族の人々から衆望され、また彼らに選ばれ、政治を行う人としての地位にありました。このような人さえも、ブッダに従って出家するというならばというが、アヌルッダの母のこころだったのでしょうか。

 アヌルッダはバッディヤを訪れて、ともに出家しようと勧めました。バッディヤもまた、ブッダ・ゴータマを尊敬する念においては、彼におとるものではありませんでしたが、さすがにサキャ族の政治の頂点に立つ者の責任があるので、簡単に了承することはできませんでした。「七年待ってくれたまえ」「そんなには待てない」「では、六年待ってはくれぬか」「とても待てない」そんな問答の繰り返しののち、「では、七日待ってくれ」「そのくらいなら待とう」ということで、アヌルッダは、ついに施政者のバッディヤを口説き落としてしまったのです。

 さて、それから七日ののち、彼らの一行は七人に増え、ひそかにサキャ族の領域を立ちいでました。彼らのうち、ウパーリ(優波離)をのぞく他の六人は、すべてサキャ族の良家の出身でしたが、ウパーリだけは身分の低い理髪師でした。境界をこえたところで、六人は、装身具を取りさり、上衣にそれをつつんで、ウパーリに渡しました。「ウパーリよ、おまえはこれから国に帰れ。これはみんなおまえにあげる。これだけあれば一財産だ」。彼はそれをかかえて、呆然としてみんあの後ろ姿を眺めていましたが、やがて湧然として、彼の心中にこみあげてくるものがあったのです。
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 日常
もくじ  3kaku_s_L.png 四国遍路
もくじ  3kaku_s_L.png 結衆
もくじ  3kaku_s_L.png 仏教
もくじ  3kaku_s_L.png 仏教解説
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 巡礼
【58 人間としてのブッダ -故郷の人々- ②】へ  【60 人間としてのブッダ -故郷の人々- ④】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【58 人間としてのブッダ -故郷の人々- ②】へ
  • 【60 人間としてのブッダ -故郷の人々- ④】へ