仏教解説

49 人間としてのブッダ -遊行- ②

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 昔もいまもそうですが、田舎に住んでいる人たちというのは、全員ではないにしろ保守的であり、新しい思想や文化にはあまりよい印象を持っていなかった傾向にあるようです。古い経典の中に書かれていることを読んでいても、そのことを感じさせるそうです。そして、この時代における新しい思想家であるブッダ・ゴータマは、田舎においては必ずしも、大きな町のように素直には受け入れられなかったようです。
 ある時には、ブッダ・ゴータマが、大勢の弟子の比丘たちとともに、マッラ(末羅)族の領内を遊行して、とある村に入った時には、村の人たちは、
 「あのえせ沙門どもには、水もくれてやるまいぞ」
 といって、その村でたった一つしかない水の湧き出る井戸に、草や籾がらを投げ込んで、井戸のふちまで満たしてしまったなどということもありました。「ウダーナ」(自説経、七、九)に記されている「井戸」と題されるお経に出ています。

 また、ある時のこと、ブッダ・ゴータマが、マガダ(摩掲陀)の国のパンチャサーラ(五葦)という村にいたときには、托鉢に行ったけれども、誰もブッダの鉢に食べ物を入れてくれる人がいなかったということもありました。
 お経のことばは、ブッダは「きれいに洗われた鉢を、そのままに持ち帰る」より他はなかったと、「団食」と題されるお経(相応部経典、四、一八。漢訳同本、雑阿含経、三九、一五、「乞食」)に語られています。

 またある時、同じマガダ国のエーカサーラ(一葦)という村にあったころには、その村に行乞して、「なんじも、みずから耕して食をえたならばいかに」と詰問されたことがありました。このことに関しては、もう少し詳しく記しておかなければなりません。
 玄奘の「西域記」を読むと、マガダの国の描写のなかに、そこの農業のことが記されている。そのあたりは肥沃な土地があり、そこでとれるお米は、その粒が大きく、かつ光沢が優れていてたいへんおいしいとされ、しかもその収穫は一年の中で何度にもおよぶとあります。お経の中には、播種の時期にあたっていたと記されていますが、農業にたずさわる人々は、その忙しさを、年に何度も繰り返えさなければならなかったでしょう。
 ブッダ・ゴータマがただ一人、鉢を手にしてその村のある家の前に立ったのは、ちょうどそのような多忙の農繁期にあたっていたのでしょう。辺りを見れば、牛がひきだされており、鋤が並べられ、家の中では、手伝いの人々に配る食事の用意もできています。そんな時、この家の主人がブッダの托鉢する姿を見ると、つかつかとその前に歩み寄って、少々声を荒げていいました。
 「沙門よ、わたしどもは、こうして田を耕し、種をまいて、食を得ているのだ。あなたもまた、みずから耕し、みずから種をまいて、食を得たならばどうであろうか」
 それは、明らかに詰問でした。目の前にいる人々は、こんなに忙しく、額に汗して働いているのに、あなたは少しの労働をすることなく、悠然と食を得ようとしているが、それでよいのか、といっているのです。
 すると、その時ブッダ・ゴータマはさらりと答えていいました。
 「その通りである。わたしもまた耕す。耕し、種まき、そして収穫して、食を得ている」
 家の主人は、まったく虚をつかれました。彼は、自分の耳を疑うような顔をして、じっとブッダの顔を見つめていましたが、やがて次のように問いました。
 「だが、沙門よ、わたしどもは、誰もまだ、あなたが田を耕したり、種をまいたりする姿をみたことはない。いったい、あなたの鋤はどこにあるのか。あなたの牛はどこにいるのか。また、あなたはどんな種をまくのか」
 彼にはブッダ・ゴータマのいう意味が分からなかったのです。詰問者は、いつの間にか質問者に変わっていったのです。
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